読み書き

読んだものについての覚書

『倫敦塔』(インクナブラPD)夏目漱石

夏目漱石が、倫敦塔の記憶を頼りに描く、幾幅もの幻想画。漱石が、生きねば、生きねばと直截な文言を連ねるのは意外。ここでの漱石にとって、「生きねばならない」という命題の基礎となるのは、思うとおり思うようにならざるまま生きることを強いられる、死よりも辛い生の事実。それでも、と。ここでの倫敦塔はそのさまざまに束縛せられたる生の軌跡のふかぶかと刻印せられたる歴史の碑。